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「シド……て呼んでもいいかな」
「あれ。シドって呼ばれたことなかったですっけ」
馴れ馴れしく言いにくかっただけ、だなんて言えなかった。
「ダイナーではなくて、上官の溜まり場であるバーではなくて、どこか飲めるところあるかな」
「ないこともないっすけど。タクシーでいかなくてはならない遠いところですよ。それに、そこ変なオジサン達が集まるんですよ」
変なオジサン? 雅臣が首を傾げると彼が意外なことを呟いた。
「たとえば、御園大佐とか、あと、谷村社長という御園の義理のお兄さんと。あと、たまにエドとか、ジュールおじきとか、喋っているのか喋っていないのか、何しに飲みに来ているのか無言で向きあっているだけで、むっちゃつまんねー集まりって感じのところっすよ。俺はつき合えないですね、あんなところ」
どこが変なオジサン達だ!
御園家を司る主要ボスな男たちばかりの集まりじゃないか。
あのミスターエドまでいるし。
もの凄いメンバーで雅臣はびっくりする。
「そこ、教えてくれるか。今夜は、俺のおごりな」
「なんで、ここで一言妊娠について教えてくれたらいいことじゃないですか」
「やだ。その場所を教えてくれるか、連れていってくれるなら、教える」
もう、わかりましたよ――と、シドがふて腐れながら了承してくれた。
「城戸サンひとりで乗り込んだら気の毒な場所だから、連れていきますよ。もう。後悔しないでくださいよ」
「だったら、なんでそこで飲めるだなんて俺に教えたんだよ。他にないんだろ」
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