1511人が本棚に入れています
本棚に追加
「ムーンライトビーチっていうショットバーは奥様が幹部と集う場で、ここは臣サンがお似合いだけれど、俺は子供扱いされるところで、Be my Lightというレストランこそ基地中の誰もが来ていて、俺達二人絶対に目立つ。あとの飲食店は軍人がいるだけで目立つ。あ、料亭があったな。連隊長御用達の……」
「あー、『玄海』という店か。パイロットだった頃、一度だけ葉月さんが連れていってくれたな。そこは敷居が高いな」
「でしょー。となると、この峠を越えた島の裏側にある漁村しかないんですよ。基地があるこっち側はまさに軍人がうろうろしているから」
なるほど。基地の裏側、島の山をひと越えした海岸にある漁村か……と雅臣も納得した。
そのタクシーがちょうど、峠を越えたところ。時間はそんなにかかっていない。だがタクシーでなければ来られないほどのところに、御園大佐はわざわざ行くのかと驚きだった。
それほどに通ってしまう場所とは如何に。
峠を越えるとすぐに海辺を走り出し、漁港へと辿り着く。タクシーが止まっただけで、雅臣はそこをみつけた。
「屋台?」
赤提灯に『なぎ』と書かれている屋台が港でぽつんと営業している。
「将さんという『大将』が、親父達の愚痴を聞いているってところっすかね。元は奥様がパイロット達と通っていたところみたいだけれど、いつからか御園の親父たちの集まり場みたいなんですよ」
まさかの屋台! しかもまさに『親父が集まりそう』!
最初のコメントを投稿しよう!