6.上官(あの人)が泣いた日

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「ムーンライトビーチっていうショットバーは奥様が幹部と集う場で、ここは臣サンがお似合いだけれど、俺は子供扱いされるところで、Be my Lightというレストランこそ基地中の誰もが来ていて、俺達二人絶対に目立つ。あとの飲食店は軍人がいるだけで目立つ。あ、料亭があったな。連隊長御用達の……」 「あー、『玄海』という店か。パイロットだった頃、一度だけ葉月さんが連れていってくれたな。そこは敷居が高いな」 「でしょー。となると、この峠を越えた島の裏側にある漁村しかないんですよ。基地があるこっち側はまさに軍人がうろうろしているから」  なるほど。基地の裏側、島の山をひと越えした海岸にある漁村か……と雅臣も納得した。  そのタクシーがちょうど、峠を越えたところ。時間はそんなにかかっていない。だがタクシーでなければ来られないほどのところに、御園大佐はわざわざ行くのかと驚きだった。  それほどに通ってしまう場所とは如何に。  峠を越えるとすぐに海辺を走り出し、漁港へと辿り着く。タクシーが止まっただけで、雅臣はそこをみつけた。 「屋台?」  赤提灯に『なぎ』と書かれている屋台が港でぽつんと営業している。 「(しょう)さんという『大将』が、親父達の愚痴を聞いているってところっすかね。元は奥様がパイロット達と通っていたところみたいだけれど、いつからか御園の親父たちの集まり場みたいなんですよ」  まさかの屋台! しかもまさに『親父が集まりそう』!
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