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「はー、親父くさ。俺、日本酒のクセがまだ慣れないんだよな」
シドが面倒くさそうにガラスコップを持つ。
「だからまだ子猫ちゃんなんだよ。文句言うならこっちくんな」
「いただきます、大将」
初来店サービスの一杯を手に取り、最後は年代が違う男三人、ひとまず『いらっしゃいませ、初めまして』の乾杯をした。
さっそく出されたおでん盛りを食べたが、極上だった。
「うまい。こんなにうまいおでんを食ったの久しぶりだな」
これは心優にも食べさせてあげたい――。そう思ったが、ここに来るのは確かに『気持ちが向かうかどうか』は難しそうな雰囲気だった。
親父の店、御園が集まる、シドは子猫と子供扱い、基地の裏側で小さな峠を越えなくてはならない。
だが、うまいおでんと、何も言わなくてもわかってくれている親父的な大将。そして静かに凪いでいる漁港。港も自分たちだけで静か……。
ここで黙って酒を飲んで、うまいおでんを食べているだけで。それだけで、落ち着くような気がする。なるほど『男の場所だ』と雅臣もだんだんと親父達の気持ちがわかってきた。
「シド、葉月ちゃんは大丈夫だったか」
「んー、まあ。そこそこかな」
「そっか。いつまであの子は無茶するんかね。コックピットにいる時から、どこまでも自分を追いつめて」
大将は自分の妹か娘を案ずるかのように、疲れた顔を見せた。
「大丈夫だって。今回は司令の配慮だったと思うんだけれど、旦那さんが途中で空母に配属されたんだ。高知沖で補給があったんで、その時に補給艦に乗って帰ったけれどさ」
「そうか。海東君もそこは心配だったわけだ」
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