6.上官(あの人)が泣いた日

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 親父さんとシドのなにげなく続く会話。でも、雅臣はおでんのちくわを頬張りながら目を瞠っている。その、その、御園の極秘がつまった話をここで易々と。しかも壁もない野外で大丈夫なのかよ――という驚きだった。しかも親父さんなんでも通じているし、海東司令を『海東君』と呼ぶなんてどんな大物! 「司令も、御園と提携していないと困ること多いんだろ。そりゃあ、葉月奥様を大事に大事にしているよ」 「そうして葉月ちゃんも守ってもらっているわけだしな。ちょうどいいギブアンドテイクってところか」  話の内容がわかりすぎるぐらいにわかるのに、雅臣は驚きすぎてまったく話に入れない不思議な状態。  しかも雅臣がそれを聞いてもいい人物なのか、聞かせてはいけない人物なのか。そんな警戒も一切なし。それはつまり? 既に御園大佐やミスターエドから『城戸大佐という男はうちの仲間』と伝わっているということなのか? もう雅臣の頭の中はぐるぐる渦巻いている。 「シドも夢が叶って良かったじゃないか」 「は? 俺の夢? そんなもんないっつーの」 「なにいってるんだよ。おまえさ、子供の頃、『僕、日本に来たら忍者になる』て言っていたじゃないか」  雅臣のとなりで、シドがコップ酒をぶっと噴いた。 「俺、おっちゃんにそんなこと言ったか?」 「言ったわ。かわいかったなあ。あんころのシドは、ママに連れられてここに来たことがあっただろう」 「うーん、覚えているけれど。俺、そんなこと言ったのか。マジか! うわ、恥ずかしい!」 「いまは、空母の艦長様を守る裏方の海兵さん。忍者みたいなもんじゃないか」
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