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「やめてくれ、おっちゃん。そ、それ以上、俺がガキの時の話、大佐の前でしないでくれよ」
「あー、そうそう。城戸君、この子、時代劇の大ファンなんだよ。それで『僕、忍者になる』なんだよ。かわいいだろ」
金髪青眼のフランス生まれの王子が、『時代劇の大ファン』。しかも子供の頃の夢が『忍者』。もう雅臣も駄目だった。『マジかよ!』とコップ酒片手に大笑いをする。
「わーっ! だからここに来るのいやだったんだよ! 初めてきた男にここまで俺のことを喋られるとは思わなかった!」
『くそ、もう一杯!』と、シドが一気に飲み干したコップを大将に差し出す。大将もかまわずになみなみとコップに日本酒を注いだ。
もう雅臣もおかしくて、おかしくて。まさか、こんなトラ猫王子が見られるとは思わなかった。
「だってさ。俺って、大人になったら日本の御園家を護衛することを前提に育てられたんだぜ。朝飯も納豆とか平気ででてきてさ。イタリアの離島だったんだぞ。なのに、納豆が当たり前に出てきて、エドにだし巻き卵とか食べさせられて。いまでは、どーしてだよう……。エドのだし巻き卵が『おふくろの味』になっちゃって泣けてくる!」
「すごい育てられ方してんな、シドは……。ミスターエドとかと一緒に暮らしていたりしていたんだ」
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