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「あー、そ、そいうことになるのか!」
飲み過ぎて重い頭を抱えながら、雅臣はさらにがっくりと項垂れた。
「嘘だろー。心優のあの顔、めっちゃ怒ってるじゃん。俺と臣サン、どうして会っていたのか絶対に勘ぐっている」
どうして会っていたか、言わなくちゃだめ? いわなくてもなんとかなる? トラ猫王子のパニックは続く。
だが、雅臣は腹をくくった。
「なんとかする。シドは余計なこと言うなよ。俺がなんとかするから」
「聞かれたら、正直に答えるってことなんすか」
「わからない。心優と正面切って話さないとわからない」
「俺が心配していた件だけは、絶対に言って欲しくない」
そこは男として、そして、心優が哀しまないためにも死守せねばならないことは雅臣もわかっている。
「安心しろ。そこは言わない。言わないが、なんとかする。どうする、一度、家に帰るか? 帰るなら俺の自転車を貸してやるけれど」
シドが腕にしているミリタリーウォッチを眺めて唸る。
「間に合いませんね……」
「シドも腹をくくれ。うちで風呂浴びて、メシ食っていけよ。俺のシャツ、貸してやるから」
「うわー、女が結婚生活する家で酔いつぶれて、風呂借りて、夫のシャツ借りて出勤って最悪じゃねえかよ」
「まだ結婚していない」
同じじゃないか! とシドがじたばた布団の上で暴れ出した。なんだこのガキンチョは、おまえは本当にシークレット隊員の『チャトラ』なのかと首を締め上げたくなってきた。
再度ふすまが、勢いよく開いた。
「シド、うるさい! 臣さんも早くして!」
またドンときつくふすまが閉められる。
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