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おまけ① 俺のライバルは、俺!?
たまに、彼女が俺じゃない誰かをみつめている気がしてしかたがなかった。
言っておくが、シドではない。
この部屋には俺と彼女のふたりきり。
ふたりだけしか入れない、存在しない、交われないこのベッドルームでよく感じることが……。
仕事が終わり、お互いに制服を脱いで大佐とか中尉とか、飛行隊大佐とか、護衛秘書官とかなにもかも脱ぎ捨てる。
夜の静寂に、密やかな甘い吐息を忍ばせ、肌を重ねる時間を堪能する。
宵闇に紛れて、人知れず……、そっと。
と言えば聞こえはいいが、シーツの上の熱気は激しい。
普段はおっとりと大人しい彼女を揺さぶって煽るのも、男で年上である雅臣のほう。
彼女が『臣さん、臣さん……』と切なく泣きそうな声で、雅臣の胸の下、その素肌に抱きついてくる。
その愛らしさを眺めながら、雅臣はふと最近、気がついたのだ。
臣さん、素敵。かっこいい。愛してる。
雅臣がほしい言葉をうわごとのように呟きながら、彼女が雅臣の肩にしがみついて、ぼんやりと目を細め恍惚としているその視線が『俺を見ていない』ということに気がついたのだ。
彼女の吐息も、自分の熱も収まった深夜。
彼女が静かに寝息を立てているそこで、雅臣は静かに起き上がり、彼女の頭の上に近づき、そっと自分も彼女が見ていた方向へと試しに視線を向けてみた。
そしてはっとする。
「あ、あれか」
自分に抱きついていた肩越しに、彼女が見ていたもの。
それは『横須賀マリンスワロー時代、コックピットにいるパイロット ソニック』が写っている『広報ポスター』だった!
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