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遠くからシャワーの音。先に子供っぽく抵抗していたシドを『酒臭いと女の子から避けられるぞ』と説き伏せて風呂に放り込んでおいたので、彼はいまそこにいる。
だから、その隙にと雅臣は抱きついてきた心優をそのまま冷蔵庫の扉に押しつけた。
「お、臣さん」
彼女の頬に触れて、その顔を上から覗き込む。
ちょっと戸惑っているかわいい猫の目がそこにある。
「俺、酒臭いな」
「平気だよ……」
「ただいま、心優」
そっと心優のくちびるをふさいだ。酒臭いこと承知の上、でも雅臣はそのまま心優のくちびるを吸って遠慮なく口の中まで舌を忍び込ませる。
「っん……、臣さん……」
時間が経った酒気と男の汗の匂いを彼女に押しつけて、吸わせている。それでも心優は、くたびれた制服姿の雅臣に強く抱きついてくれる。
だから雅臣も自分より華奢で小さな彼女を、腕の奥深くまで抱きしめる。
それでも、女はそれで許してくれるわけではない。心優はそれだけでは流してくれなかった。
「二人が一緒にここに帰ってきて、びっくりしたよ。だって、臣さんとシドて絶対に、お互いに近づかないと思ったから。部署も業務も空母艦に乗らなければ接点なんかないじゃない」
「気になっていたところに、ちょうどシドが通りかかったんだよ」
「御園のことなら、毎日一緒に訓練をしている鈴木少佐に聞けたんじゃないの?」
鋭くて、逃げ道を徐々に塞がれて、雅臣は焦ってくる。それで、なんとか言い訳ようと咄嗟にでたのが――。
「シ、シド。俺がスワローだった時のファンだったみたいで……。その時の話を聞きたいっていってくれたんだよ」
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