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ものすごいハッタリだった。半分事実で、ファンで話を聞きたいなんて彼から言い出したというのは大嘘。だがそこで心優は。
「そうなの! でも、やっぱりそうだったんだ!」
なんだかとてもしっくり納得したような驚き顔で、雅臣を胸元から見上げる。
「なんかね。わたしと臣さんのことは関わりたくないって顔をしたり、悪態ついたりすることはあるんだけれど。でも、城戸大佐はいざとなったらすごい男みたいなニュアンスのひとことを、ぽろりとこぼすことがあるんだよね。素っ気ないふりして、やっぱり臣さんのこと、尊敬しているんだと思う」
あのトラ猫王子が人を尊敬している素直な姿なんか似合わない。そんなことあるわけない。でも、まあ。心優がそう感じたようなので、ひとまずそこに落とし込んでおくことにする。
「まあ、それで。スワローの話で盛り上がって男同士で呑んでいたら、酔っぱらちゃったみたいなんだよな」
そこで雅臣はまだ抱きついている心優を、さらに胸元に抱き寄せる。小さな黒髪の頭をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんな、びっくりしただろう。なんか、すげえ騒いで帰ってきたんじゃないかな」
「うん。すごく仲良く帰ってきたよ。肩を組んで軍歌を唄いながら帰ってきて『ああ、男同士なんだから』ってかんじだった」
記憶にないとはいえ、自分がやったことが目に浮かんだ。若い頃から酔えばそんなかんじだったから。先輩達と呑むだけ呑んで、大声で騒いで寄宿舎や官舎に帰る。それが男の羽目外しだった。
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