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「もうチャイムが鳴る前から、下で大声が聞こえて。でも、他のお父さん隊員もよくやっているでしょ。今日もどこかのお父さん達が羽目を外して帰ってきたのかなと思ったら、なんか唄う声がうちに近づいてきてチャイムが鳴った時は『え、うち!? 臣さんが!』て驚いちゃった」
うわー最悪の帰り方だと雅臣は項垂れた。
「ということは。ここらへんのお父ちゃん達に聞かれていた、奥さん達に見られていたってことか」
「うん、ゴミ捨てに行ってきたら、さっそく言われちゃったよ。でも臣さん、御園准将のお気に入りで普段からきちんとしている爽やかな大佐さんだって奥さん達が言っているから、城戸大佐でもあんな男っぽく羽目を外すのね、うちの主人だけでなくて安心した――なんて逆に奥さん達ほっとしていたけれど」
「あー、そうなんだ。俺のそのイメージ、違っているのにな」
心優がくすっと笑っている。
「だよね。お猿な臣さんだって、そのうちに奥さん達もわかってしまうかもよ」
「やめろよ。俺が猿になるのは、心優の前だけだろ」
また心優を冷蔵庫の扉へと押し返して、雅臣は身をかがめて彼女のくちびるを探して、もう一度チュッとキスをしてしまう。
「もう、だめ。シドが出てきちゃうよ。臣さんは先に食べてよ。時間ないよ」
「はあ、仕方がない。今夜にとっておこう」
今夜こそ、心優とゆっくり寄り添う夜を堪能しようと心に決め、雅臣は心優からやっと離れた。
先にテーブルについて食事をいただくことにする。軍人生活そろそろ十八年、時間が限られている時の食べ方は慣れている。
「うまいよ、心優の和食の朝メシ」
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