8.男の気持ち、だし巻き卵

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「御園大佐も季節ごとに、新しい自分の香水を探すらしいよ。大佐はもともと興味なかったけれど、葉月さんの従兄のお兄さんの影響で習慣になっちゃったんだって。そういえば、御園大佐もほんのりと香る時あるものね。すっごいこなれているんだよね。やっぱり大人だよね」  なんだと。御園大佐は興味ない振りして、実はプライベートではきちんと男の嗜みを忘れていないというのか。あの人からそんな匂いしたことあるか、なんて、雅臣は密かに振り返る。それほどさり気なくつけていて、心優もちゃんと嗅ぎ取っている。女の子って敏感なんだなあと雅臣もその気になった。 「そうだな。訓練する時はともかく、制服の時はまたつけてみるか」 「ほんと、嬉しい。帰ってきた時に臣さんに抱きつくの楽しみ」  いい匂いの大佐殿に抱きつくのが楽しみとかわいい顔で言われてしまい、もう雅臣は力が抜けてふひゃふひゃになっていきそうな気持ち。それこそ本当に鼻の下を伸ばした猿顔になっているのではないかと思う。  心優は一生懸命に、夏制服の白シャツに、黒い肩章を付け替えている。 「シドも背が高いけれど、体格は臣さんとはちょっと違う気がする。合うかな、合わないかな……」  他の男の体型を知っているのかよ。俺と比べているのかよ。海兵隊の青年に負けたくないなとまた複雑な臣サンに。  そろそろ出てくるだろうと思ったら、ちょうどそこに上半身素肌で腰にバスタオルを巻いたシドが、奥のバスルームからリビングへと現れた。 「大佐、お先でした。すみません、いろいろお世話になって」  急に礼儀正しい大尉に戻っていた。そして気後れした様子で、リビングのソファーで肩章を付け替えている心優へと見た。
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