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いつにないざわめきが道場から聞こえていた。
幾度も繰り返される金属音が鳴り響いている。
「雅臣、おい……あれ……」
道場の中を覗いた橘大佐が、瞬時に凍った顔になる。
何が見えるのかと雅臣も覗いたが、目に飛び込んできた光景に目を瞠る。
キンキンと鳴り響く金属音は、ロッドとロッドの打ち合い。もの凄い速いテンポ。それだけ激しい打ち合いで対峙している二人。
そこには黒い戦闘服を着ている金髪の海兵王子、『シド』。いま小笠原では最強といわれている海兵王子の対戦相手は、なんと心優!
「うわわ、俺、心優ちゃんが戦闘しているのを見るのは初めてだけれど」
滅多に護衛部の訓練などお目にかかれないから、心優の本業を目の当たりにした橘大佐は驚愕している。
だが、現場で本物の戦闘に立ち向かう彼女を見た雅臣でさえ、海兵王子と彼女の凄まじい気迫に気圧される。
道場の入口には近くを通って気になったのか、事務官の女性隊員数名に、訓練着を着ている海陸部の男性隊員も足止めされているかの如く、護衛部の訓練を覗いている。
すげえ。マジでやってんのかな。
すごい……。怖いわ。
既に見学をしている彼等に彼女等は、驚愕の表情に固まったまま。そして目も見開いたまま――。
それは同じく訓練をしているはずの護衛部の隊員達も、凄まじい二人の本気に集中力を削がれたのか、対戦式組み手の手合わせを相手と共に手を緩めて若い二人の対戦に見入っている始末。
手加減なし、金髪のシドが大振りで真上からロッドを振り落とす。その素早さと力強さ。それが彼より小柄で華奢な心優の真上に落とされようとしている。
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