1527人が本棚に入れています
本棚に追加
あっ! 誰もがそこで目を伏せた。橘大佐までもが『あいつ、本気か』と舌打ちをして止めに入ろうと道場に一歩踏み込んだ。
「待ってください。むこうの訓練ですから」
雅臣は橘大佐が入らないよう、入口に立ちはだかってしまった。
その瞬間『おお!』とどよめく歓声。雅臣も再度確かめると、振り落とされたロッドが宙に飛ばされているところ。道場の天井高く、金髪王子が持っていたロッドが跳ねとばされている。その真下には、長い片足ですっと蹴り上げた心優の姿がある。
見たか。いまの。あのスピードを見極めていないと、蹴りひとつで阻止なんてできねえよ!
すげえ、園田中尉。さすが、ミセス准将の護衛官!
園田中尉、素敵!
ギャラリーの隊員達が湧く。
「まじかよ。あれを蹴りで阻止できるのかよ。あれけっこうな動体視力の持ち主だぞ。心優ちゃんがパイロットテストをパスしたの納得だ」
さすがの橘大佐も『すげえ』と感嘆の表情。
「にしても、雅臣。やっぱおまえ、心優ちゃんの旦那になる男だなあ。訓練だからって落ち着いていられるだなんて」
「いえ、ほら。二人の間に、護衛部部長の中佐がついているでしょう。彼が止めなければ大丈夫と思っただけですよ」
なんて、嘘。本当は雅臣もヒヤッとして目を閉じてしまったくち。だがここで慌てて止めにはいるような夫になんてなりたくない。そんなことをしたら、心優に『わたしの実力を信じていないの』とかわいい顔で怒られてしまうだろう。
「まて! フランク大尉、園田中尉、熱くなるな。まて!」
その護衛部の長である中佐の声が道場に響いた。
「二人とも、そこまでだ!」
最初のコメントを投稿しよう!