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「もう逃げられないな?ここに来たのが運の尽きだ。お前が気に入った。どんな事情だったか知らないが、もう俺のものだ。帰さないぞ。」
「わかりました…あなたが私を要らなくなるまで、ここにいましょう…」
娘は家事をしたことが無かったらしく不慣れな様子だったが、なんとか懸命にこなした。
おかしなことに、娘は帰りたいとも言わず、やったわずかな食事すらもまともに食べなかった。
「お前はなぜほとんど飯を食べない?今日も少し多く稼いできてやっただろう?」
「私はお昼に家の外に出させて頂いて、食事はほんの少しと、お水を頂ければそれで充分です。」
娘はそう言うだけだった。
「お願いがあります…。あなたに人のものを盗んで欲しくないのです。私のために盗みを続けているのでしょう…?」
娘は懸命に訴えた。
「あなたが罪人になってしまうことがとても悲しい…。お願いです…たとえ私のためであっても、盗みはやめてください…!」
男は本当に娘が気に入っていた。
懸命な娘を見て、なんだか心が癒やされている気がしていたからだった。
必死に訴える娘に少々圧倒されながら、男は頷いた。
「…お前が、そう言うのなら…」
それを聞いて娘は嬉しそうに笑った。
「その代わり、私は一生懸命尽くしますから…!」
娘は帰りたいとも言わずせっせと男に尽くし、男も約束の通り、盗みはせず、まっとうな金で娘と暮らした。
「お前は微かに良い香りがするな…同じ風呂に入っているのになぜだ?まあいい、気立てもいいし抱き心地もいいし、お前は導かれてここに来たんだな…」
娘は男に抱きしめられ、涙を流して嬉しそうに笑った。
ささやかで幸せな日々が続いたある日、娘は男にそっと抱き付いて悲しげに言った。
「私は…あなたと離れたくありません……」
「当たり前だ、お前は俺といればいい!」
男は嬉しかった。
娘がずっと自分のもとにいてくれると心から信じたかった。その娘が、離れたくないと言ってくれたのだから。
「あなた…私を置いてくれてありがとうございます…!」
「?変な奴だな、居ろと言ったのは俺なのに…。縄ももういらないな…外してやろう。…よし、飯が出来たようだな、食うか。」
食事を始めた男は、自分の前で幸せそうな顔で水を飲む娘の頬を、そっと撫でた。
「そういえばお前が来てから酒の量が減ったな…家に帰ってくるのも楽しみになった。お前のおかげだ…。」
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