その乾いた心に… 〜愛する君へ〜

3/5
前へ
/5ページ
次へ
そんなある日、男は村のある家の食べ物を盗んだ罪を着せられ、納屋に押し込まれて殴られた。 「俺はやってない!もう盗みはやめたんだ!!」 男は抗議したが信じてもらえず、しばらく殴られ続け、その後にようやく解放された。 盗みなどとっくにやっていない。これも好きになった娘の為に… 「…早く帰ってアイツの顔が見たい…アイツなら信じてくれるはずだ…」 愛する娘の顔を思い浮かべ、ボロボロのまま家に辿り着いた男だったが、娘は家の中にも外にも姿がなかった。 「居ない…!どこに行ったんだアイツ…探しに行こうにももう疲れちまった…酒でも飲んで待つか…」 男はしばらくやめていた酒を久々に飲み、寂しさと、濡れ衣を着せられた苛つきも相まって少々飲み過ぎてしまった。 「アイツ…まさか俺が盗みを、やったんじゃないかと、言いふらしに行ったんじゃ……だとしたら…ただじゃ置かない……」 酒にすっかり酔い、疑心暗鬼になった男は、しばらくして戻って来た娘を押さえつけた。 「あなた…!?」 「お前か…!?俺が村のやつの食い物を盗んだと言ったのは…!俺じゃねえ!!」 「何のことです??私はそんなこと…」 「とぼけるな!お前を信じてたのに…!!それに、逃げようとしたのか!?お前は俺から逃げられないと、教え込まなきゃだめなようだな…!!」 男はそばにあった縄を娘の体に乱暴に巻きつけ、動けないようにした。 「なぜ…!?一体どうしたのですか…!?」 「どいつもこいつも俺が盗みって…!!誰ももう信じられねえ…!お前だって疑ってるんだろう!!」 「そんな…っ!!私は疑いません…!!あなたが好きなのに…!!」 「うるせぇ!!逃しはしない!離さないぞ!」 男は酒に酔ったまま、動けない娘を抱きしめ、娘は訳もわからぬまま男の腕の中で泣き続けた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加