流れて行った日々

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 沙奈とは大学三年に上がった時になんとなく付き合い始めた。二人ともサークルの方にはもう参加しなくなっていて、代わりに二人でよく出かけた。  アウトドアサークルに入っただけあって、沙奈はアウトドア好きで、小さなテントを背負って二人で一緒にいろんな場所に出かけたっけ――  うちの学校のサークルは沙奈が思っていたのとちょっと違ったんだろうな。  沙奈があんまりにも手際よくテントを建てたり、火を熾したりするので驚いたものだ。ブッシュクラフトも好きなの――なんていってその辺で拾ったもんで色々作ってたっけ……  見上げた満天の星とか、朝の海とか――綺麗だったよな。そういえば最近出かけてないな。 「そうだ」  俺は沙奈が作った暗号表を持ってリビングに戻った。テーブルの隅に転がっている箱を手に取ると、表を見ながらダイヤルを回す。 「あれ……これじゃ一個数字が足りないな」  『キャンプ』に対応する数字を入れたけど違った。そもそも『プ』なんて書いてない。 「じゃぁこっちか?」  『アウトドア』違う。これも一つ数字が足りない。濁音もない。  他にも思いついたものを入れたけれど全部違った。  家にいるとだんだん気が滅入ってくる。少し気分転換をしようと靴を履く。どこかで見つかるかもしれないと、ちょっと期待している自分もいた。沙奈がいそうな場所を散歩しながら探してみよう。
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