残された箱

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 久しぶりの休日、日ごろの寝不足を解消するために昼まで寝ていた俺は、沙奈(さな)の姿が見えないことに気が付いた。  いつもなら「おはよう、もう昼だよ」って笑いながら朝食ならぬブランチを用意しているのに。 「沙奈」  呼んでみても返事がない。かわりにテーブルの上に小さな箱が置いてあった。 『(なお)君へ――』  と丸っこい沙奈の字で書かれたメッセージカードが添えられている。俺はそれを手に取った。 『尚君へ、少し考えたいことがあるので、しばらく家を空けます。どこにいるかは内緒です――と言いたいところですが、念のために、この箱の中に居場所を書いた紙を入れておきます』  俺は箱の方を手に取った。開けようとして蓋に手をかけたがびくともしない。よく見たら鍵が付いている。鍵穴があるわけではない。数字を回して開けるタイプだ。八個も数字がある。金庫かよ。 「なんなんだ、沙奈のやつ……」  たまの休みだというのに、いらないことに頭を使わせないでほしい。俺は箱をテーブルの上に投げた。  そのうち飽きて帰ってくるだろう。そう踏んでトーストを焼く。いつもは沙奈がベーコンエッグを作ってくれるのだ。俺はフライパンをコンロに置くと、卵とベーコンを冷蔵庫から取り出した。コーヒーを淹れるために湯も沸かす。
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