残された箱

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 数分後、出来上がったベーコンエッグは酷いものだった。ベーコンは真っ黒に焦げている。でも卵の方はまだ黄身が全然固まっていない状態なのだ。沙奈が作った物との違いに驚愕した。  湯が沸いたのでコーヒーを淹れる。フィルターの場所がわからない。どこに入れたっけ……ようやく見つけ出して、セットすると、今度は粉の量がわからない。 「二杯……なんか少ないな、三杯か? いや、四杯かな……」  そういえば、インスタント以外で自分でコーヒーを淹れたことがなかった。結局よくわからずに五杯の粉をフィルターの上に入れる。  お湯をドバドバ注ぐと粉は大きく盛り上がった。 「あっつ」  コーヒーの粉と混ざりあった黒い湯がキッチンにこぼれる。台ふきを探し出して拭きとると、今度は慎重にお湯を注いだ。ようやく一杯分のコーヒーがカップの中に入る。  どうにか出来上がった朝食は、少しも美味しくなかった。ベーコンは黒焦げ、卵はほぼ生、コーヒーは死ぬほど苦かった。
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