残された箱

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「ったく沙奈の奴、いったいどこに行ったんだよ」  無性に腹が立った。今まで出かけるときは朝食だって用意して出かけたはずだ。それが、今日に限って何も用意されていない。その上あれだ、謎の箱。沙奈が戻ってきたら散々文句をいってやろうと思った。  ふつふつとした怒りを抱えながら、どうにか心を落ち着けようとタブレットに手を伸ばす。  本を一冊読み終えてから時計を見ると午後二時を指していた。スマホを見たけれど沙奈からの連絡は一つも入っていない。今度は映画を観ることにする。アプリを開いて検索を始める。 「これ、沙奈が見たがってたよな……」  別に俺は見たいわけじゃない。いくつか候補を見つけて、別の作品を見ることにした。  映画を見終わって五時、沙奈からの連絡はない。こちらからコールしても出る気配はない。いったい何なんだ。  俺はため息をついてから沙奈が置いていった箱とカードをもう一度手に取る。  まだ読んでない箇所があった。下の方に『追伸』と書いてある。 『開けるためにヒントは私が大切に思っている言葉です』 「いやいや、言葉っつっても数字しか入れられないだろうが……」  頭の中に浮かぶ沙奈に悪態をついた。
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