1「僕と契約して魔法少女みたいなやつになってよお!」

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 コアラ達の魔力と“型”が合う人間を探し出し、ドロイド・ボーンを倒すことができる能力を与え、地球人自らに異星人を討伐・追放させようというのである。まあ、地球人の魔力とコアラ達の魔力の適合率が異様に低かったせいで、本来ならば“適合しても候補から外されそうな”いかにもおっさんなキバルに声がかかってしまったというわけらしいが。 『……俺、魔法少女じゃなくて、魔法剣士みたいなのがいーんだけど。それならほら、ラノベの主人公みたいでカッコいいじゃねえかよ』 『残念ながら僕の権限ではコスチュームの変更ができません。潔く諦めてください』 『マジでか』 『マジです。ていうかできるならとっくにやってると思わない?誰がおっさんに魔法少女になって欲しいと本気で思うと思ってんの?』 『ああ、うん……』  お願いしてきている立場のはずなのに、何でこうも横柄なんだろうあの犬モドキは。キバルは呆れるしかなかったが、まあそもそも地球を守るために来てくれたというのだからあまり無下にできるものでもないのだろう。ちなみに、空間転移能力があるらしい彼らは、鍵がかかった部屋でも問題なく出入りすることができるとのこと。キバルのアパートに不法侵入していたのは、そういうわけだったのである。  ちなみに、しばらくは犬のふりしてキバルの部屋に居座ると宣言してきた。ペット禁止のアパートなのにどう誤魔化せばいいのか。本当に迷惑なヤツである。 ――信じたくねぇけど、こうもいろいろ見せられちゃ……まったく信じないわけにもいかないんだよな。少なくとも、喋ってテレポートする犬がそこにいるのは間違いないわけで。  本当にどうしてくれよう。キバルは昨夜の出来事を思い返しながら、自分の職場の門をくぐった。  魔法少女とかそれ以前に、自分にはやるべきことがある。  龍羅川市立龍羅川中学校(たつらがわしりつたつらがわちゅうがっこう)――そこが、キバルが長年追い求めてきた“教師”という夢の場所だ。元々あまり勉強が得意ではなかったこともあって、結局勉強を教える教師ではなく体育を教える教師を目指すことになったのだけれど。  忙しいが、可愛い教え子達との充実した毎日がそこにはある。  今の自分にとっては、魔法少女なんてぶっとんだ話より、ずっと大切なことに違いなかった。
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