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 民間伝承に「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」とあるが、SNSが日常会話を連想させるほど当たり前になった現代では、閻魔様にこれまで通りの威厳を求めるのはいささか酷というものだろう。  今日(こんにち)、ネットの「特定」の目はあまねく真実を次々と暴いている。そんな中で閻魔様の恐ろしさを説いても、それこそ虚言と一笑されるにちがいない。  軽んじられる閻魔様には同情を禁じえない。しかし、かくいう俺、遠山(とおやま)(みなと)自身も絶対的な閻魔様信奉者というわけではない。年を重ねるにつれて、こうも思うようになっている。世の中には閻魔様に許される嘘もあるのではないか、と。  困窮に瀕すれば人は諦めるか、無理にでも打開しようとする。そこに多少の非行があったとしても他人に迷惑をかけないのであれば、大目に見てもいいのではないか。  つまり、要するにあれだ。  嘘も方便はありではないか、そう思うのだ。
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