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嘘にはそんな信条を持つ俺なので、生物室の掃除をしているときに、掃除当番を交代してあげたクラスメイトが窓の向こうの駐輪場で彼女と仲睦まじくファーストフード店にしけこむ話をしながら歩いているところを見かけても、呆れこそすれ怒りはしなかった。
「げ、遠山……」
モップを手にし、ぽかんと口を開けて間抜け面をさらす俺に、ばっちり目撃された彼は顔をしかめ、目をそらした。だが、すぐに開き直ったように睨んでくる。
「文句あるか? 塾があると言ったが、あれは本当だぞ。ただちょっと時間に余裕があるから休憩するだけだ」
ならばこう問いたい。その時間で掃除をしてはどうか。罰はあたるまい。
とはいえ、残作業がゴミ出しのみなので黙っておく。わざわざ藪をつついて蛇を出す必要はない。
曖昧に笑って誤魔化そうとするが、彼女に呼ばれた彼は自転車を引っ張り出してから、一睨みしてきた。
「告げ口したら許さないからな」
つまり罪の自覚はあるということか。まあ彼がここまで頑なでいるのだ。何かのっぴきならぬ理由があるのだろう。例えばこの後、両親への挨拶の相談をするとか。
ありえないとは思うが、決定的な反証もない。であれば、ここで引き留めるのは人としてどうか、という話になる。
「早く行ってあげろよ。黙ってるから」
「本当か?」
「ああ、ごゆっくり」
破局の原因になるのはごめんだ。校門から出ていく二人を温かく見送り、俺は丸々太ったゴミ袋を持ち上げた。
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