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 我が愛する母校、白金学園(しろがねがくえん)高校ではホームページのトップで紹介するほど生徒の自主自立が重んじられている。  過激派の教師と生徒会の間では権限を巡る攻防があるようだが、行事推進、予算編成、そして清掃活動までが今のところ平和裏に生徒の手で行われている。  中でも清掃活動は全校生徒に関わり、かつ権限維持のため重要な仕事と認識されている。それでいてほぼ全校生徒に歓迎されてないのが実情だ。特別教室のある北校舎の清掃があたった場合には悲鳴まで聞こえてくる。当然だ。なんせ鉄アレイが潜んでいるのではないかと疑ってしまうほど重いゴミを持って一旦、二階の渡り廊下を通り、南校舎脇の集積場まで運ぶ羽目になるのだから。  むろん俺もゴミ出しは好むものではない。  廊下を運ぶのは耐えた。が、上り階段の前でへこたれた。  重い。その上、膨れ上がった袋が邪魔で足元が見えない……。  ゴミをそこらのゴミ箱に入れて帰りたいところだが……やむを得ない。時間はかかるが、一段ずつ確かめて歩くか。  奮起して怖々上がると、前方から同じように足元の覚束(おぼつか)ない、ベニヤ板を担ぐ男子が下りてきた。 「あ、すみません」  いやいやこちらこそと挨拶をしながらすれ違う。前が見えているのかと気になり振り返ると、彼は階段ホールで(つまづ)いていた。さもありなん。教室に着く前に板を割らなければいいが。  南校舎に入ると、ペンキ缶を抱えた生徒が走ってきた。床に半紙を敷いて習字をしている生徒もいる。壁際にヤシの木を置いているのは、校内をジャングル化すると宣言していた文化祭実行委員だろう。廊下全体が繁華街に紛れ込んでしまったような賑わいだ。  どのクラスも間近に迫った文化祭の準備に(いそ)しんでいるようだ。結構結構。ついでにうちのクラスも手伝ってくれないだろうか。  詮無いことを考えていると、職員室から出てきた担任の榊先生と鉢合った。
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