キヨミズくんを酔わせたい

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その人が働いている店なんだろう。白くて狭い階段を上ってやんちゃなタイガー、って飾り文字とファンシーなタイガーの絵が看板に書かれた店に入った。タイガーか。私の古巣、ホワイトタイガーを彷彿とさせる店名だわ。 バイトしなくちゃ生活できない。こちらから行く勇気がないのに、あちらからこうしてお声掛けいただけたのはありがたい。 「じゃあ早速だけど、バッグはそのカゴに入れてベッドの下に隠して。で、そこの服に着替えて、脱いだ服もカゴに入れて。準備できたら呼んでね」 と、私を店内の狭い個室に押し込んでその人はドアを開け出て行った。 あの人が指差してた方を見ると、たしかに服があった。これに着替えるのね。あら、かなり単純な作りの服ね。白いミニ丈のワンピース。チャックを閉めればお着替え完了な簡素な服だわ。 呼んでねって……私、あの人の名前も知らないのに何て呼べばいいのかしら? とりあえずドアを開けたら、あの人がいた。 「まずシャワーに行くんだけど、他の客と遭遇しないためにフロントに連絡してから部屋を出て」 と、ドアの脇に備え付けられてる受話器みたいな物を指差した。その横には、モニターのような四角い物が壁に埋まっている。 部屋を出て廊下を歩き、角を曲がって 「で、シャワーはここね」 と、服を脱ぎだす。 「え?!」 「お客様には脱がせてあげてね。で、シャワーを浴びます。はい、脱いでシャワー行くよ」 ……今私もシャワー浴びるの? 講習って、お客さんへのサービス内容を教えることだったらしい。て言うかこの人、新しく店に入る子みんなにこうして講習してるの? 自分がスカウトした女の子に? それ、役得過ぎない?
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