不気味な花

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不気味な花

 最近、友人が不気味な花を育てているらしい。  ソイツの家に行ったやつが言っていた。話を聞くと、まるでホラーに出てくるような恐ろしさだと言っていた。  ネットで不気味な花を調べて画像を見せても、どれも違うという。調べて出てくるどの花よりも気味が悪いらしい。  その話に興味を持った。だから、さりげなく家に遊びに行けないか聞いてみた。返事はオーケーだった。  そして今日。今、その花が目の前にあった。前に遊びに来た時にはなかった、強い存在感を放つ花が。  出されたお茶を口に含みながら、それを観察する。  濃い緑の茎と葉に、真っ赤な花弁が五つ。ここまでなら普通の特徴だ。  しかし、その花弁は内側に人間の歯のようなものがびっしりとある。歯の内側には舌のようなものもある。一つ一つの花弁にこれがあるのだ。不気味なんて言葉では言い表せないほど気味が悪い。  加えて、大きさもかなりデカい。人の頭くらいなら丸呑みにできそうだ。……食虫植物ならぬ、食人植物と言われても納得ができる。  それくらい不気味な花だ。 「なぁ、なんでこれを育てようと思ったんだ?」  純粋な疑問だった。なんで育てようと思ったんだろう。  体型が華奢で、大人しそうな見た目のコイツがこんな花を育てているなんて。物腰も柔らかくて、口調も中性的。  外見や性格のイメージだと全然似合わない。花は好きそうだが、もっとこう……可愛らしい花のイメージだった。 「え? うーん……生活に華やかさが欲しくて、かな」 「いや、それなら他にもっといいのがあっただろ」 「あはは、確かに」  わざわざこんな得体の知れない植物じゃなくたって。パンジーとかコスモスとか、サボテンとか。たくさんある選択肢から普通これを選ぶか? 「つーかこれ、どこで買ったの?」 「ああ……確か駅前の花屋、だったかな」 「へぇー」  駅前の花屋にこんなものがあるのか。かなり変わった花を置いている花屋だ。売れるのか? 絶対ほかの花を置いた方が売れ行きが良いだろうに。 「なんて名前の花?」 「んー、なんだっけ……忘れちゃった」  あはは、と恥ずかしそうに笑う。笑うと長い前髪が揺れた。  名前、覚えてないのか。ネットで調べようと思ったのに。 「あっ、写真撮ってもいい?」 「ん? ああ、いいよ」  不気味で気味が悪いが、滅多に見ない花の珍しさに思わず写真を撮りたいと思ってしまった。  許可を貰ったから遠慮なく撮ろう。スマホを構えて画面をタップする。カシャっと音がして花の画像がスマホのデータとして残った。  写真を撮ったあとは、普通に雑談をして特に何も無く別れ、家を後にした。
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