不気味な花と失踪事件

失踪事件

　最近、この辺りで失踪事件が多発している。若い女の人、中年の男性や高齢の男性……年齢も性別も関係なく消えている。

　この街はそれなりに治安が良かったから、あまりこういった事件はなかった。なのに、ニュースで耳にすることが多くなった。

「……失踪した人達、まるでついさっきまでいたかのように消えるって話なんだよな」

　飲みかけのコーヒーが残っていたりお風呂が沸かされていたり。自らの意思でいなくなろうとしたわけではないと思われる痕跡がある。

　だから、失踪……というよりは誘拐などの事件に巻き込まれたんじゃないかと、テレビの人は言う。

　所詮、テレビ越しじゃ本当のことかどうかなんて分からない。とはいえ、不気味な話だ。

　ピロンッとスマホが軽快な音を立てた。誰かから連絡が来たらしい。

「……アイツか」

　不気味な花を育てているアイツだ。

　メッセージには、今日の放課後、僕の家でテスト勉強しない？　とあった。

　そういえば、テスト間近だった。アイツとは良く一緒に勉強をする。得意科目が文系と理系で分かれているから、互いに苦手な部分を教えられるのだ。

「いいよ……っと」

　肯定の返事を送って、家に向かった。あの不気味な花はどうなったんだろう。意外と枯れてしまっているかもしれない。