詩人極光になる刹那

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 恍惚として、私はひしめく太陽を見つめて、天体が膨張するのを間近に、神を超え、世界を超え、宇宙物質を取り除いて、純然たる精神になるのを夢に見る。  他愛もない話声が聞こえてくる、散文的生活に憧れて、惨めな生活を過ごして、性欲を超越して、人間をやめ、天使となり、鋼の太陽に背を向けて、自殺を試みていた――あの浅い川で死ぬことが出来たら、私はあらゆる人間を理解できるのかもしれない。  この手記は詩だろうか――はたまた、私の脳髄が、シナプスが、大脳皮質が、海馬が、求めていたあらゆる文章か。  何者にもならず、ただただ存在している自分は、海に漂う屑よりも、屑らしく、美しいフランスを思い出し、女生との懐かしき思い出に思いを馳せ、病に憔悴し、疲れたる肩に接吻する――それが私。  つかみどころのない私の魂を掌握した中国の女は、綺麗な滝津瀬の髪を靡かせ、端麗なかんばせを月に向け、紅楼夢なぞ、小説にうつつを抜かし、私のもとから去っていった。  よじれた襞が、宇宙の物理と変貌していくとき、私は神に近づき、分裂症的妄想で、世界から飛躍し、谷を越え、山を越え、海を越え、マグニチュード七の地震を憎み、乱れた長い髪を揺らして、私は男でありながら、女となり、メルトダウンを起こす原発を憎悪のまなじりで睥睨し、恐れた。ありとあらゆる存在が物質的恍惚を覚え、光となるとき、究極の観念が一人歩きし、私を捉え、放ち、詩という詩に向かって嘔吐していく私の辛い胃腸。  乱れていく、ダダイズムなぞに身をやつし、ツァラのいかれた頭を粉々にして、散文にしたらどれだけの美徳と悪徳が入り混じることか。光の矢がありとあらゆる象徴から乱れ混じり、私を追従していく、その刹那があったとしたら、私は、私は、私は、破壊されていく、聖者の足蹴りによって。
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