詩人極光になる刹那

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 狂おしい刹那――私が言語となるとき、私は光にまみれてうっとりするだろう、そして美しい時間の呪いを味わい、地を這い、苦痛のさなかに極光を浴びる。  ピアノの音色が脳髄に入り込み、壊されていく私の諧調、乱れ、乱れ、桜になってしまう私の快楽――自慰、接吻、まぐわい、そんなものを超越し、精神と精神が誰かとつながる、その瞬間まで私は文章を書き連ね表現していく。聖者、賢者、あらゆる偉大な人間は表に出ない、偉大な人間が世に知られず、涅槃の傍でゆっくり息をしている。  黒龍が私の背にまとい、私に諭すだろう、世界を越えろと、私は黒龍の悪の雨のもと、煌々と輝く那由他の雨を眺め、日本の画廊を夢に見る。悟っているようで、悟れず、欲望を拒絶して、欲望にまかれ、月がそこにあるのに、雲隠れし、私の生活を彩る全てが、私の心を隠蔽し、過ぎ去っていく古月に思いを馳せ、小野小町との思い出に浸り、ジャンヌダルクの力を見て、ベアトリーチェに殺された父親のように獰悪で、偉大な詩人より純粋にありたいと――そう願う刹那、私の頭上にまたもや雨、雪、雷、神の足跡、象徴を壊していき、即物的美を破壊し、詩の中に私の魂の天使は紛れ込む。精神的恍惚、物質的恍惚、あらゆる感情が、私を取り巻き、そして最期に私を殺すでしょう。
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