詩人極光になる刹那

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 よじれていく、私の襞が。  星々の輝きのもと、私を明滅させる惑星が遠いところで私を呼び、離そうとしない。あらゆる存在は聖なるかな、たとえ十字架を背負ったとしても……。  美しい詩に憧れ、精神的享楽を得ようとして物質に走ったことを恥じ、自分が祠の中にいた神だったことを思い出し、神武天皇が地に君臨したとき、私を呼んでいたこと。語と語が結び付き、私を求める精神が死滅していくことを知れば、私は切ない感情に浸り、自分を苦しめる。究極、男女の隔たりなどなく、感性と理性に隔たりなどなく、神々が人間に生殖を為せと命じたころ、私は一人天界でうたたねしていた。  寂寞を感じ、フランスの片隅で煙草を吹かすとき、フランス人がこちらに向かってフランス語で呼びかけるとき、私の日常が奇跡になるとき、何者かになれると願っていた。彗星が尾を引いて現れ、日本の空を明るくするとき、私は私を取り戻す。  ここに綴られる、私のナルッサス的文章は、私の病を慰安し、文章は文章を呼び、こだまし、存在する――全てが私の手元にある。  私は一切を失って下界した。一切が私の手元にあった。私は王者だった。自分を支配する王者であり、他者はまた他者の王者であり、私は乱れていく自分の精神を繋ぎ留め、融解していく。  この文章が終わるころ、私は何者かに変貌するだろう、自分を偽ることなく、ただ純粋に表現していく恐怖を覚えながら、私は自己を晒していく、世界の中で。
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