詩人極光になる刹那

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 チェス盤の上で狂い散る、女性世界王者の純粋な気質にやられ、私は憔悴し、彼女は思考と思考を繋ぎ合わせ、超人的なIQを持って世界に君臨する。  またある国では独裁者が、イギリスのデパートを買い占め国民を豊かにし、葉巻を吸いながら、イギリスの酒を飲んでいるだろう。  おお、聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、ビート詩人ギンズバーグよ! あなたは裸体の天使となり、精子をまき散らし、詩をまき散らし、いかれた思考をまき散らし、想念が天使となるまで踊り続ける、それこそアメリカのビート。  メルトダウンしていく私の詩は、メルトダウンメルトダウンメルトダウンメルトダウン、一酸化炭素が私の脳髄にひしめき、フランスのアヘン中毒者のように私は幻覚、幻聴、幻臭にまみれている。ドラッグを求めるアメリカのストリートダンサーは、ぐるぐるぐるぐるまわり、踊り散らし、白痴の媚態をもった娼婦は、シガーに精神を重ねて、聖なる陰毛を晒している。そこにはしらみが混濁し、男という男は己の不能を誇りに思うだろう。  これは詩か? いかれた思想か?  私は錯乱している、まるで宇宙とつながり、土星と交信し、電灯が陳列された町を練り歩き、極地まで行ってしまったフランス詩人の詩を読んでいる。私は十万冊の本に囲まれ、シガーを吹かし、うずもれて、中国の聖者と会話する。  人間存在とは偉大であり、卑小であり、害悪であり、神がかっている。人間に自由を、万人に自由を、究極の平等を、貧しいアフリカ人が美しい詩を紡ぐとき、私は精神享楽を得る。
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