サービス

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 少しバカにしていた俺だったが、フラワーマスターの能力は伊達じゃなかった。  どんな花でも咲かせる俺の能力は業界で重宝された。  俺の活躍はやがて会長の目に留まり、会長の孫娘との逆玉婚で俺は、日本最大手のフラワーチェーン社長に就任した。  社長室には今も才能の花が咲き誇っている。 「あの時『演歌でイントロの長さぴったりにナレーションを入れる能力』で妥協しなくてよかったよ」 俺は才能の花に話しかけた。 「その能力なら、サービスでつけておきましたよ?」 「えっ? マジ?」 「試してみたらどうです?」 「えーと、『浮世舞台の花道は表もあれば裏もある 花と咲く身に歌あれば 咲かぬ花にも唄ひとつ……』ほんとだ! 何も見なくても演歌の花道のナレーションがつらつら出てくる!」  俺はしみじみ思った。 「やっぱ、この能力は要らねぇ」
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