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「安心し給え。彼は決して今日の事を言わない。彼も共犯者なのだからね」
天宮くんの頬に舌を這わせ涙を拭い去ると、塩っ辛い味が口の中に広がっていく。天宮くんは微かに体を強張らせるも、直ぐにぐったりしたように力が抜き凭れかかった。全てを委ねるようなその姿に、僕は愛らしさを感じてしまう。
「此処ならばなんの気兼ねもなく、僕たちは遊戯を楽しめる。だからそんな顔をしちゃいけないよ。君は友人を一人、失ったと思っているのかもしれない。でも、それは間違っている。人数の問題ではなく、如何に君を理解してくれる人間が傍にいるかが大事なのだよ」
慰めるように僕は、天宮くんの艶やかな黒髪を指で梳いていく。
「僕は君のその嗜好を理解してあげられる。君を残して帰った、欲だけを吐き出す善人面した獣とは違うのだよ」
鎌頼は善人の仮面を被った獣だ。だからこそ僕は、鎌頼を嗾けて此処に来るように指示をした。彼が天宮くんを理解してあげるなど、毛頭無理な話だと分かっていたのだ。これで天宮くんも彼の人畜っぷりを、身をもって理解しただろう。
天宮くんの傷心は、此れからは僕が癒していけば良い――
僕は悄然としている天宮くんの耳元で囁く。
――天宮くん。僕は決して君を手放したりなんてしないからね。
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