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「君は何をそんなに悔やんでいるんだい?」
「……俺は友人に酷い事をしちまったんだ」
「酷い事?」
僕は可笑しくなって、思わず笑い出す。要領を得ないとばかりに怒り混じりの視線を鎌頼が投げかけてくるが、可怪しいのは鎌頼の方だ。彼はやはり、天宮くんには相応しくはない。
「君は友人失格だな。今の一言、天宮くんに対していの侮蔑の言葉でもあることを、君は分かってはいないのだな」
「何が言いたいんだ」
「僕は彼の嗜好を理解しているからこそ、こうした行為をしているのだよ」
そう言うなり、僕はぐったりとする天宮くんの耳朶を喰んだ。
「あぁっ……」
今までまるで人形のようだった体を震わせ、天宮くんは小さく喘ぐ。着物の懐から手を入れ、小さな突起を撫で回す。
「天宮くん。これは君が望んだ遊戯なんだよね?」
耳元で囁き、突起を指先で強く挟む。天宮くんはコクコクと頷き、艷やかな瞳からシトシトと涙を零す。悔しげに顔を歪めた鎌頼の姿は愉快で堪らなかった。
「それなのに、君は酷いことをしていると言った。こういう嗜好の人間を否定したのだ。罪なことだとは思わないか?」
青ざめていた表情の鎌頼は、返す言葉が見つからないのか口を噤んでしまう。天宮くんには、黙り込んでいては分からないと言っていたくせに、とんだお笑い草だった。
「君はもう用が済んだんだろ。早く帰ると良い」
鎌頼は黙ったまま、蔵の扉を開けるとそのまま振り返ることもせずに出ていった。
「酷い奴だね。僕の考えていた通り、彼は君には相応しくない」
僕に体を預けていた天宮くんに、呆れたように言葉を掛ける。天宮くんは頬を涙で濡らすばかりで、口を噤んだままだ。
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