交陰遊戯

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「変わったって……どんな風に?」 「どうって……なんて表すれば良いのだろうか……妙に艶っぽいというか……まさか郭に連れて行かれているのか?」  男の見当違いな回答に、怒りを通り越して僕は呆れてしまう。僕は一度としてそんな場所に行ったことなどない。憶測だけで物事を述べる講釈野郎といるほうが、よっぽど天宮くんにとって害悪だ。 「郭など、僕はそんなとこはお断りだ。しかし……そんな風に見えるのか……」  失意にくれているのか、天宮くんの声はことさら弱々しくなる。  僕は壁から耳を離すと、少し熱を持ち痛む耳を擦りつつ思案した。  これは不味い事になってしまったようだ。このままでは天宮くんは、僕との遊戯を辞めてしまうかもしれない。どうにも、それだけは、阻止したかった。  そこで僕はふと、思い至る。  真にふさわしい相手は僕しかいないのだと、天宮くんに諭してあげれば良いではないだろうか。  考えが纏まった頃。隣の襖が開く音と共に、廊下から話し声が僕の耳に届く。  僕は少し待ってから、襖を首が出せる程度に開きそっと顔を出す。  天宮くんと長身で体躯の良い男の後ろ姿を捉え、僕はすぐさま顔を引っ込め襖を閉めた。  天宮くんの懇意の相手が、優等生の鎌頼(かまらい) 八辻(やつじ)という厄介者だという事が判明した。  あの鼻持ち高い優等生野郎に、天宮くんの趣向など理解できないだろう。女すら抱いたことのないような堅物漢はきっと、天宮くんの色香に耐えきれなくなった、謂わば害虫にしか過ぎない。  害虫に与える花などないが、一筋縄ではいかないのは間違いない。それならば――  僕は思わず口元を歪め、悪魔のような笑みが零す。いっその事、共犯者にしてしまえばいいだけなのだ。
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