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 弟子入りして数ヶ月が経ったある日。 「そろそろ会合の日ですね」  花の魔女が言った。 「会合とは何ですか?」 「年に一度、最高位の魔女が集まるのです」  問う弟子に、花の魔女が説明した。 「なんだか凄そうですね」 「同窓会のようなものですよ」  述べる弟子に、花の魔女が笑った。会合に関する説明はそれだけだった。  そうして会合の日。  確かにそこにあるのに誰も知らない秘密の森。そのどこかにある小さな広場に、5人の魔女とその弟子たちが集まった。  巨木を切り出した一枚板のテーブル。それを囲むように5人の魔女が座り、その後ろに弟子たちが座っていた。  挨拶もほどほどに、花の魔女が、緊張でガチガチになっている弟子に向け、魔女たちを1人ずつ紹介する。 「森の魔女――この森の(あるじ)にして最年長の魔女で、私たちのまとめ役です」  老樹(ろうじゅ)の葉のような深緑(しんりょく)(まと)う魔女は、キセルから口を離して煙を吐き、「悪かったね、年増(としま)で」とぼやいた。 「星の魔女――星の力で運命を垣間見(かいまみ)る魔女です」  星屑(ほしくず)を散りばめた黒服の魔女は、無言で会釈してから、テーブルに広がるカードへ視線を戻した。 「霧の魔女――まさしく霧のような魔女です」  服も肌も瞳の色も真白(ましろ)の魔女は、いたずらっぽくクスクスと笑った。 「全の魔女――あらゆる精霊の力を司る万能の魔女です」  虹の一番下を煮詰めたような紫の服を着た魔女は、快活(かいかつ)に笑いとした声で、「よろしくな」と挨拶した。 「そして、花の魔女ことこの私。あなたの先生です」  花開くように両手を広げ、花咲くように微笑んで、花の魔女が締めくくった。
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