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 会合の翌日、弟子が花の魔女に、とあることを願い出た。 「私の魔法が見たい、ですか?」 「はい。昨日の会合で先生の魔法は、その」  ――先生は、ただお茶を()れただけ。しかも他の魔女に手伝ってもらって。 「なるほど、私の魔法だけすごくなかったと」 「そ、そういうわけじゃ」 「いいんですよ――わかりました」  わずかな間、何かを考えてから、花の魔女が(かたわ)らの棚へ手を伸ばした。棚には花の種が詰まった瓶が所狭しと並んでいる。 「それでは、少しだけ見せましょう」  花の種を一粒だけ手に取ると、花の魔女は弟子を連れて庭に出た。  花の魔女が庭の片隅にしゃがみ込み、指先で浅く土を掘り、種を植え、掘り出した土をそっと被せた。 「では、よく見ていてください」  弟子に告げて、種を植えた場所へ両手をかざす。  少しして――ちょこんと、小さな芽が顔を出した。  するりと伸びて、双葉に分かれた。  ぐんぐんと伸びて、幾枚もの葉が広がった  てっぺんに白いつぼみがひとつ生まれ、どんどん膨らみ――花がぽっと咲いた。 「これが、私の本当の魔法です」  花の魔女が立ち上がり、誇らしげに胸を張る。 「これが、ですか」  言葉に詰まりながら答える弟子。その顔には、明らかな戸惑いの色が浮かんでいる。 「はい。花の魔女たる所以(ゆえん)です」  にもかかわらず、満面の笑みを弟子に向けて、花の魔女が答えた。  一輪の花を咲かせただけで胸を張る花の魔女に――弟子は何も言えなかった。
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