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6
しばらくして、帰宅した花の魔女が庭に現れた。
「ただいま戻りました。そちらの方は?」
「あ、先生。お客様のようです」
「こんにちわ、花の魔女」
安楽椅子から立ち上がった魔女が大仰に会釈する。
「初対面かと思いますが、お名前は?」
「黎明の魔女。第一位の魔女だ」
「ああ、悪いお噂をいくつか。ご用件は?」
黎明の魔女が指を鳴らす。
揺れていた安楽椅子が――魔女の背丈ほどもある杖へと姿を変えた。
「勝負しろ」
魔女の臨戦態勢とも言うべきその姿を前に、しかし花の魔女は眉ひとつ動かさない。
「目的は?」
「白々しい。お前を蹴落とし私が最高位につく。それだけだ」
そこで、弟子がようやく理解する。
この魔女は客などではない。先生と決闘して打ち倒し、最高位の魔女になりかわるつもりだと。
「なるほど」
花の魔女が、微笑んだまま一礼する。
「どうかお引き取りを」
「そうはいかない」
剥き出しの殺意とともに杖を向けられ、しかし花の魔女は少しも動じない。
「戦いたくありません」
「戦えないだけだろう。お花が大好きな魔女さんよ」
あからさまな挑発に、しかし花の魔女は顔色ひとつ変えない。
「悪いことは言いません。どうか」
「なら――仕方ないな」
黎明の魔女が、手にした杖を振り上げ、弟子へ向けて振りかざした。
不可視の衝撃波に弟子の体は吹き飛ばされ、家の壁に激突する。
弟子の背中が壁を伝い、体がずるずると崩れ落ち、地面に咲いていた草花を押しつぶした。
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