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7
動かなくなった弟子を、花の魔女が一瞥した。
「やる気になったかい?」
「殺る気にはなりました」
「上等だ」
ニタリと笑い、黎明の魔女が杖を構え、
「ところで」
「あ?」
花の魔女の言葉に、黎明の魔女が怪訝な声を出す。
「弟子に手を出した時点で決闘は開始された、それでよろしいですか?」
「何を呑気な」
「大切なことです。終わってから文句を言われたくありませんので」
「はっ」
黎明の魔女が鼻で笑い、口角を吊り上げる。
「もちろん、いつ仕掛けてきても構わないさ」
「わかりました」
「とっとと杖なり使い魔なり出しな。それくらいは待っ――」
黎明の魔女の言葉が途絶え、口元から笑みが消える。
「な、なん、だ?」
途切れ途切れに言葉がこぼれ、その姿が急速に変化する。
顔からは色艶が消え、無数のシミと皺が刻まれる。首は細り皮と骨だけになり、手は節くれ立ち血管が浮き出る。
――老いていくその様を、花の魔女は静かな笑みを湛えて見つめている。
「ああぁ! ああああ!」
帽子はほつれて形を失い、服は裂けて破れ落ちる。装飾品は色褪せ錆つき、宝石はくすみ光を失う。
――朽ちていくその様を、花の魔女は何も言わずに見つめている。
「ああ。あぁ」
足腰の弱った年寄りのように揺れ動く。すがりついた杖はポキリと折れて、地面に砕けて木屑へと成り果てる。
そして、もはや見る影もない老婆となった黎明の魔女が、地に倒れ伏した。
「あぁ……あぁ……」
もはや嗄れた声で呻くばかり。
花の魔女はその姿から目を離し、空を見上げて目を閉じた。
直後、何もない宙空から――霧の魔女が現れた。
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