親父の娘(仮題)

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「おまえが返事したら済む話やろが」 「なんでせなアカンねん。用事ないやろ」 「聞いてんねんから、用事ないわけないやろ」  依瑠も父親が意思を曲げない性格なのは知っているので、早めに答えておいて黙らせることにした。 「ギターのメンテで楽器店」  そう答えられた俊也は、いざ返された答えに対して、次に言う言葉を考えていなかったので「そうか」としか言わなかった。  平日の11時頃、車両は二人だけで占められ、地下鉄のトンネルにこだます列車と線路の強い金属音が流れている。  依瑠はそれ以上、言葉を発しなかった。依瑠からしてみれば俊也は、会えば口うるさく文句を言ってくる面倒な人間であったので、会話を避けたいのが基本的な心持ちである。しかし俊也にしてみれば、ささくれている心情を逆撫でされたようで、無性に腹が立ったし、逆に自分がここに居る理由を問われたら具合が悪い。 「おい。メンテは終わったのか」  今度の問いへの返事は早かった。 「終わったから家帰ってるんちゃうん」 「おまえのギターは確かテレキャスやったな」 「それが」 「エエ音するんか」 「そんなんあんたには関係ないやん」 「たまには聞いてもええやろ」 「好きやから()うたんや。てか、あんたなんでここに居んねん。今日は月曜やろ」  俊也は少しビクついて、咄嗟に話を逸らそうとする。
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