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ナナシは赤く染った顔で、いつもの微笑みを浮かべながら琳寧が居る後ろへ振り向いた。その際に、血が付いてしまった髪がふわりと靡く。
「な……こんな……、こんなの……望んで……」
「おや? 貴方が言ったのですよ。殺してやりたいって。なので、私は貴方の復讐を代わりに行動したのですよ」
琳寧とナナシがそう会話している間、翔は顔を青ざめ、隣にある顔なし死体を一目見た。
「い……いやだ。俺はまだ……まだ!! 殺されたくねぇぇぇええええ!!!」
翔は涙を流し、情けない表情を浮かべその場から走り去っていった。
「情けない男も居たようですね。まぁ、私には関係ありませんが」
翔が走り去って行った先を、微笑みながらナナシは見ていた。
「なんで……。私は……、私はここまで望んでない! 確かに殺したいほど憎かった。でも、殺して欲しいなんて言ってない!! それに香苗は私を守るためだった。私が早とちりで香苗を恨んで──」
「それがどうしたのですか?」
「…………えっ?」
琳寧の言葉を最後まで聞かずに、目を丸くしてナナシは問いかけた。
本当にわかっていない様子だ。
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