いつの日からの日常

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そうして、その濡れた指が無理矢理あたしの唇に押しつけられる。 ぬるっ、と、塗りつけるようにその指が動いてきて。 あたしは目を見開いて、まさかと思って硬く唇を閉じた。 けれど。 「っ、ふっ、んん、っ!」 あたしの手首を掴んでいた手が離れて、脇腹が撫でられた。 そのくすぐったさに口が緩んだ。 その隙を見逃す筈はない。 こいつは、ぐっとその指をあたしの口内へと押し込んだ。 「っ、」 嫌悪感で、顔を顰めてしまう。 ガリッと歯を立てるも、その指は抜かれない。 「痛いんだけど。」 痛いなら、抜け。 そう言いたいのに、こいつがあたしの舌を押し付けて話せない。 苦しい。 気持ち悪い。 「っ、ん、んん、」 嫌だ、と。 首を振って拒否しても、何でかこいつは満足気な表情を浮かべるだけだ。 恥を忍んで、背けていた顔を戻したというのに。 あんまりだ。 いつも何考えてるか分からない冷めた顔してるくせに。 今のこいつは、爛々と目を輝かせている気がしてならない。 変態だとあたしに言うけれど、それはあんただ。 そんな思いで睨みつければ、視界に入るその口角が上がった。 「あんた、さ。自分が煽ってんの分かってる?」 そうして、その直後だ。 ずぶっと、今までの比じゃないくらいの大きな刺激が走った。
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