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「話を戻そう。不動産屋と暴力団の(いさか)いを知っていて、尚且(なおか)つどちらにも与していない。では君の目的はなんだ?」  女の声が一転して鋭くなる。男は紫煙をくゆらせて愛想笑いを浮かべる。 「俺はあのボンボンから小遣い巻き上げようと思って首を突っ込んだだけさ。だから素直に譲っただろ?」 「譲ってくれたのはんだけれど、その言い訳を使いたいならあの場で素直に名前を教えて小遣いを貰っておくべきだったね。大方僕の前では名乗りたくなかったってところじゃないか?」  男はさっき少女にした話を思い出していた。この女はものが時その理由を考えている。こういう輩は酷く厄介だ。ひとりでのこのこ出て来るのは伊達じゃないってわけか。こんなことなら偽名でも使っておくんだった。 「誰の差し金でなにが目的だい?わかる範囲で構わないけれども、返事の仕方を間違えるとちょっと痛い思いをするかもしれないので慎重に頼むよ。僕は乱暴は好きじゃない」  女の目が怪しく光る。おいそれと仕事を投げ出すわけにはいかないが、男としては市役所と直接ことを構えるのも極力避けたい。  どうしたものかと思案すること数秒。夜の空に風船の弾けるような大きな破裂音、続いて路地の向こうから煙が上がるのが見えた。  “悪魔”がなにか仕掛けたようだ。 「なんだ!?」  女が振り返って視線を切った一瞬を利用して、革手袋に仕込んでいた極細のワイヤーを女の足元へ飛ばして絡ませる。 「わわっ!?ぷぎゃっ!!」  バランスを崩して女がその場にひっくり返ったのを目視しながら男は路地を全力で駆け戻った。長居は無用だ。
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