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「あのさー、ここまで来たら、りんちゃんに全部正直に話して、りんちゃん家に入っていった子のこと直接聞いたら?」 「聞いた。」 「おぉ、お前にしては素早い対応だな。で、なんて?」 「心当たりないってさ。」 「……つんだな。」 「つんだ。」 これで手詰まりだ。 にっちもさっちも行かなくなった。 林田りんに、そんな子は知らない、と言われればそれ以上どうしようもない。 倖は少しずつ西に傾いてきた太陽をまぶしそうに見た。つい先ほどまで青空だったというのに、随分と日が落ちるのが早くなったものだ。 煙草をふかしながら見るともなしに徐々にオレンジ色に染まりつつあるグラウンドを眺める。グラウンドではサッカー部やら陸上部やらが奇声を上げながら走り回っていた。夏の終わりとはいえまだまだ暑い。ご苦労なことだ。 そのグラウンドの端っこを、とてとてと歩く女子生徒に気がついた。 スカートの丈は今時の膝下で、ぶっといおさげが背中で揺れるのが遠目にもはっきり見えた。 林田りんだ。 ちっ。 視界に入れば昨日のことが思い出されて腹がたつ。舌打ちして思いきり顰めっ面でりんを目で追った。 すると彼女は少し歩いてはしゃがみこみ、またふらふらと違う方に歩いていっては、しゃがみこむ。 何、やってんだ? カバンを持っているので帰宅しようとしているのだとは思うのだが、やたらしゃがみこんでは何かを拾う。 そして、横の生け垣に置く素振りをする。 なんか落としたのか? 気になってじっと見ていると、すぐ横に柴田が顔をだした。 同じように金網に額をくっつけて、倖が見ているものを追おうとする。 「あれって、りんちゃん?……何してるんだろ。」 「さあ。」 2人して口を閉じると、しばらく沈黙が続いた。 りんは人に見られてるとも知らず、門に近づいてからもふらふらとしてはしゃがみこんでいる。両手でそっと何かを持ち上げ、生け垣の上に置く。 倖と柴田は眉をひそめた。 こういう不思議な動きをする女子には、出会ったことがなかったので反応に困る。門まで来たりんはようやく普通に真っ直ぐ、道路を歩いて帰り始めた。 「うーん、りんちゃん、わけわからん。」 「……。」 返事をするのもバカらしくて黙っていると、おもむろにこちらに顔を向けた柴田が、割と真面目にこう言った。 「あのさー、りんちゃん、確かにかわいくないけどさ。眼鏡とったらちょっとはましなんじゃないの?」 「お前も意味わからんことを。」 柴田はりんが帰って行ったほうに視線を向けると重ねて言った。
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