1、 トトル

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1、 トトル

   視界が一瞬ぶれたと思ったら、鬱蒼とした森の中ではなく、景色が開けた森の端っこに立っていた。ボク達を見送ってくれてた、サクラさんとヴァージルさんの姿ももちろんなかった。 (『移動魔法』って凄いなぁ。一瞬でいろんな場所に行けちゃうなんて…何度体験しても不思議な感じだ)  立ちつくすボクの隣で動く気配があり、顔を向けると光太郎さんが歩き出していた。その先に町が見える。どうやらあれが、サクラさんの言ってた『ザクル』という町のようだ。 「光太郎さん。すぐに行くんですか?」 「ん?行かないの?」  光太郎さんが立ち止まり振り返る。ニコニコ楽しそうに笑って…。なんだか言うのが恥ずかしくなってきた。 「あ、えーと…。はいっ、行きましょう!」 「なになに?気になるから言ってみ?別に急いでないからさ~」  ボクの近くまで歩み寄ってきた光太郎さんが、覗き込むようにボクを見上げてきた。やっぱり、可愛いなぁと心の中で叫ぶ。 「なにさ?気分でも悪い?やっぱ、気疲れしっちゃった?」 「だ、大丈夫です!体力には自信ありますからっ」 「じゃあ、どったのさ~?」  ちょっと光太郎さんの目が細められた。あ、心配をかけてしまう。恥ずかしいけど正直に言うしかない。 「いや、あの…。サクラさんにお土産もらったんで、食べながらのんびり行くのかなぁ、なんて…思ってたので…」  サクラさん達に会いに行くのは一瞬だったけど、帰りは、光太郎さんと二人で野営でもしながら、のんびり行くものだと勝手に思っていたのだ。  まさか、帰りも一瞬で目的地に着いちゃうほど、光太郎さんが『ザクル』の町に行くのを、楽しみにしてるとは思わなかったわけで…。 「でも、目的地は近いから行きましょう。結構、大きな町みたいですから楽しみですね。あ、良い宿があるといいなぁ」  そう言いながら、お土産の入った籠を持ち直し、町に向かって歩き出した途端、光太郎さんに腕を掴まれ引き寄せられる。  振り返ると、背伸びをした光太郎さんがキスをしてきた。びっくりして固まるボクにお構いなしに、光太郎さんの舌がするりと入ってきて、ボクの舌を捕まえ絡みついた。優しくボクの舌を吸い上げる。 「ふはっ。トトル…君の、中…相変わらず…熱い…ね」  目を細めて、キスの合間に笑いながら光太郎さんが囁く。そのたびに、ボクの濡れた唇に光太郎さんの息がかかって、背中がぞくぞくした。  光太郎さんの舌は、いつでもちょっと冷たい。初めての時は、体が冷えてるのかとびっくりしたものだ。そのせいか、光太郎さんにはボクの口の中が熱く感じるらしい。 「…っ!」 「うん、硬くなってんね。(たぎ)ってる~?」  光太郎さんとのキスにうっとりしていたら、いきなり熱の溜まりだした中心をやんわり撫でられ体が跳ねてしまった。  ボクの首に両手をかけて、ぶら下がるように体重をかけてくる光太郎さんの香りが強くなった気がした。 「トトル君のそんな顔見てたら、俺もめっちゃ滾ってきたわ~。よしっ、ヤろう!」  言うが早いか、光太郎さんに押し倒され、仰向けになったところで馬乗りになられた。光太郎さんの即断即決は尊敬しておりますが…。 「あ、あのっ!ま、町はすぐそこですし、ま、まだ、日が高いですよっ」 「ん?逆に、よく見えていいんじゃね?興奮ギガマックスなシチュっしょ、これ?あ、ちゃんと結界張るから覗かれる心配はないよ」  …ぎがま…?…しちゅう…?……全然わからないけど、とにかく、光太郎さんが()()()なのは十分に伝わったわけで…。  ふっと、音が消えたような気がして横を見ると、自分たちを囲むように周りの景色が揺らめいていた。はっきり見えるのは、地面に寝てるせいで真正面に見えてる、木々が別れた隙間に見えている真っ青な空だけだった。  光太郎さんが、にかっと笑うと上着を脱ぎ始めた。下から見上げながら、初めて会った時もこうして見上げたなぁなんて懐かしく思っていたら、ボクの腰ひもを緩めてくる。綺麗な指がボクの服の中に滑り込んできて、脇腹からゆっくりと上に撫で上げた。  その刺激に、ぶるりと体が震えた。期待するように、立ち上がり始めたボクのものがズボンを押し上げていく。膨らんだ中心に気付いた光太郎さんが楽しそうに笑う。それだけで、ボクの欲望は先走って濡れ始めていく。それが、自分でもわかって恥ずかしかった。  目を逸らし視界から光太郎さんを追い出し、何とか熱を逃がそうとしてみる。だけど、それは無理だった。 「あっ…光太郎さん…ッ」 「くはっ。大丈夫…俺も一緒、だし…」  服の中で、ボクの体をゆっくり撫で回しながら、光太郎さんが下半身を摺り寄せてきたからだ。  お互い、まだズボンは穿いたままだったけど、布越しに擦り寄せてくる光太郎さんのが硬くなっているのを感じた。それを認識した途端、ボクの欲望はますます硬さが増して苦しくなってくる。  我慢できなくて、光太郎さんに触れようとした時、光太郎さんの指が、ボクの胸の先を摘まんできた。 「…あっ…っ!…んっ」 「ガッチガチだね~、トトル君」 「ん…あっ、光太…郎、さん…っ」  胸の先は完全に硬くなってるようで、光太郎さんが摘まんで引っ張ったり、親指の腹で擦ったりするのがはっきりわかった。その度に、自分の体が勝手にびくびく動く。  恥ずかしくて、逃げ出したいと思っているのに、この先を期待して体はどんどん熱くなっていく。閉じる事が出来なくなってきた自分の口から、信じられないくらい甘えた声が出ていく。鼻にかかる自分の声を止めたくて歯を食いしばっても、光太郎さんの腰が動くだけで、布越しに感じる欲望に翻弄されすぐに声が漏れていく。苦しくて、触ってほしくて、どうにかなりそうで、感情がぐちゃぐちゃになってきて…とうとう涙が溢れてきた。それもまた羞恥となって体が震える。 「こ、光太、ろう…さ、ン…。…もう、だ、出し…たいっ」 「うん。一度、出しとこっか…」 「さ、触って…くだ…さい…。…お、ねが…い…っ」 「…ははっ。…じゃあ、一緒に…な」  光太郎さんが、片手だけを服から出して、ボクのズボンの中の入ってくる。下着の中で窮屈に張りつめていたものを、優しく触れながら外に出してくれた。 「あっ…あっ……んんッ…っ!」  解放されたその刺激だけで達してしまい、ボクのものから勢いよく出た飛沫が、光太郎さん胸元ににかかってしまった。だけど、光太郎さんは全然気にもしないで、力をなくしたボクのものをゆっくり扱き出した。 「くっ……ま、待って…まだ……っ」  達したばかりで、息が整わないボクの頬に、光太郎さんが宥めるような優しいキスをしてくる。そして、ボクの服の中に残していたもう片方の手を抜き、自分のズボンに入れて自身を引きずり出した。  光太郎さんのそれは、何度見ても凄かった。ボクよりも背が低く可愛い人だけど、その欲望は顔に似ても似つかない、とんでもないものだった。色は普通(?)だけど、その大きさと長さが、まさに『魔王』級なのだ。その上、えげつない程に血管が浮きまくり、ギチギチ絡まってすごい事になっていた。  それを認識して、ボクの喉が知らず知らずごくりと鳴る。  そんなボクに、「くはっ!可愛いね、トトル君」と嬉しそうに言いながら、光太郎さんが噛みつくようにキスをしてくる。  口腔を激しく蹂躙しながら、慣れた手つきでボクのものをゆるゆる扱いてくる。あっという間に硬くなったボクのものを、自分のものと一緒に両手で包み、さらに一緒に扱いていく。  光太郎さんの、ひんやりな指の感触と浮き出た血管が、ぬるぬると垂れ続ける先走りのせいで、滑らかに擦られていく。信じられないくらい気持ち良くて、勝手に腰が揺れる。その間もずっと口腔を攻められ、背中にぞくぞくど電流が走っていく。あまりの快楽に苦しくなってぎゅっと瞼を閉じた。  視界を閉ざすと、ぐちゃぐちゃと、独特な粘着質の音がやけにはっきりと耳に入ってくる。まるで、耳の中までもが光太郎さんにされているようだ。  体中で光太郎さんを感じていた。どこもかしこも気持ち良くて、体が震えっぱなしだった。もっと感じていたいのに、ボクの欲望に限界がきていた。縋るように光太郎さんの背中に腕を回すと、お互いを包み込んで扱いていた光太郎さんの手の動きが激しくなった。  あまりの刺激に脳が痺れてくる。飲みきれない唾液で溺れそうになり、思わず光太郎さんの背中に爪を立てしまう。一度、搦めた舌を激しく吸い上げた光太郎さんは、口内から出ていくと耳元で囁いた。 「いいよ、トトル君…」  その声があまりにも甘くて優しくて…。そのままボクは、欲望を解放して意識を手放した。  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  パチッと弾ける音がして、ふと意識が戻る。ゆっくり目を開けると、辺りはすでに暗かった。でも、横から暖かい光が当たっていたので視線を向けると、焚き火を前に小枝を緩慢にくべながら、光太郎さんが片膝を立て座っていた。。声を掛けようとして躊躇う。  焚き火に照らされた光太郎さんの顔が、あまりにも真剣で…。なんと声をかけて良いのかわからなかったからだ。  子供の頃に助けてもらったのが始まりで、十年たって再会してからは傍にいる事を許してもらっている。  なんだか不思議だった。  時間は確実に過ぎているのに、光太郎さんは変わらない。ボクだけに時間が存在してるかのようで…。  そして、この先もボクの時間だけ(・・)は進んでいく。魔族の人達の寿命はわからないけど、多分人間よりは長いはずだ。だから、ボクが死んだ後も光太郎さんは変わらないままだろうと思う。 (でも、光太郎さんには、サクラさんやヴァージルさん、それにボクの知らない方達もいるはずだから…。なんたって『魔王様』だし)  ーーそう思うのだけど…。  何故か、ボクは昔から、この夜のように優しい眼差しの『魔王様』を一人にしたくないと思ってしまうのだ。  傍に居たい。ボクの命が続く限りずっと…。  それは、突然の事だった。  焚き火を見つめてた光太郎さんの輪郭が揺らめいたと思ったら、その顔がうっすらとぼやけていく。黒髪が前から後にさあっと長い赤髪に変わっていき、その、ある意味平凡で幼く見える顔が、彫りの深い顔立ちの知らない顔になったのだ。 「…え?」  ボクの口から漏れた声が、ビックリするくらい(かす)れていたけど、そんなのも気にならないくらい焦っていた。  身動ぎしたボクを、その人がゆっくりと振り返り見た。焚き火に照らされていてもわかる燃えるような赤い髪と、真っ赤な血のような瞳だった。  ざっと鳥肌が立つ。それは、明らかに恐怖だった。体が震え汗が吹き出す。 「…こ、光太郎さんっ!」  たまらず叫ぶ。喉が痛かった。それでも、呼ばずにはいられなかった。
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