10 楽園

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10 楽園

ナツと一緒にまた旅に出た。 あのナツと出会った時にナツが行けなかったタヒチ。 二人で来た。 もちろん俺らのハネムーンだ。 あの旅行から2年が経っていた。 一緒に事業をして落ち着き出した頃、俺とナツは籍を入れた。 このタヒチに来る前にハワイで挙式もしてきた。 どうしても俺は祖母に挙式に出てもらいたかった。 あの時俺の背中を押してくれた祖母。 「縁なんて簡単に切れる。切りたくない縁があるなら切らないようにしなさい」 その言葉通り俺はナツとの縁を繋いだ。 祖母は喜んでくれた。 ナツの事も気に入ってくれた。 「ハワイの女は強いのよ。強い女がモテるのよ」 祖母はナツにそう言う。 「グランマ、ナツは強いだけじゃなくって俺の癒しだから」 「あらあら、ジョー、惚気ちゃって」 そう言いながら祖母は嬉しそうだった。 タヒチでは二人っきりで濃厚な時間を過ごした。 タヒチアンパールのネックレスも作った。 良い匂いがするモノイオイルも買った。 お互いにそのオイルでマッサージをする。 なんとも言えない甘いガーデニアの匂いが心地良い。 思い出をたくさん作って東京の二人の部屋に帰ってきた。 「やっぱり自宅が一番落ち着くね」 ナツがそう言ってベッドに寝転ぶ。 「ナツ、俺はどこにいてもナツが一緒なら楽園」 そのままナツにキスをする。 ナツもそのまま目を閉じて、二人抱き合った。 『楽園』 苦しみのない幸せな生活ができる場所。 辞書にはそう書いてある。 俺にとってはナツと一緒ならどこにいても楽園。 祖母の言葉が頭に浮かぶ。 「切りたくない縁があるなら  切らないようにしなさい」 終わり
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