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3 ジョー
「俺は鈴本烝って言います。横浜出身で、今アジア旅行中です。お姉さんは一人旅ですか?」
「ジョー?おしゃれな名前」
「あ、俺ハーフなんです。母親がアメリカ人で。って言っても日系ハワイアンとのハーフなんで日本人の血が75%なんですけどね」
「ん?あ!なるほどね。どうりでモデルさんみたいと思った」
「ふふっ。そんな風に見えてました?あんなに汚い格好してたのに?」
「えっ?まあ、バッグパッカーかなーとは思ってたけど身長高くて目立ってたから」
そう話してた時に、目の前の彼の料理も運ばれてきた。
「はい。これも食べて下さいね」
小籠包を二人の間に置く。
確かに量が多い。8個ものっている。
小皿を私の前に差し出す。
思わず受け取ってしまった。
「じゃあ私のこの青菜もどうぞ」
二人の間に差し出すと"ありがとう"と言ってあの中国独特の長い太い箸でひょいと青菜を掴んで自分の小皿にのせた。
「お姉さんの名前は?一人旅?」
食べながらフランクな話口調になった。
「私は芹岡夏美。東京に住んでるよ。今は傷心一人旅中」
「傷心旅行?」
「そ!1ヶ月仕事休んで放浪中!」
「ふふっ。ナツさんって呼んでいいですか?」
そう言ってまた優しく笑いかけてくる。
「何とでも呼んで。ナツでもなっちゃんでも。ジョー君は何歳?バッグパッカーなの?」
「俺?俺は30です。まあバッグパッカーみたいなもんかなー。俺は人生リセットの旅って感じで、仕事も辞めて旅に出たって感じですかね」
「じゃあ、私たち二人とも放浪中なんだねー。何だか笑える」
「ほんと、そうですね」
目が合って2人で笑った。
「でも上海に降りたのに、タイでも会うって凄いよね。この後どこの国に行くつもりなの?」
「んーまだあんまり考えてないっす。とりあえず上海行ってみたんですけど、何だか飯合わない・・・って思って。前タイには来たことあったから、すぐこっちに来たって感じっす。ナツさんは?」
「あーちょっとわかるかも。私、上海は大昔に行った事があって、この20年で様変わりしたって聞いてたから一度見とこうと思って。でも3日で飽きちゃった。で、タイは良いよって聞いてたからこっちに早々にきたって感じかなー」
「そうなんっすねー。でも俺、タイに来て良かった。こうやってナツさんにまた会えたし。本当はワットアルンで声掛けようかと思ったんですけど、気がついたらナツさんいなくなっちゃってて。でもまさか中華食べてーって思って入ったチャイニーズレストランで相席になるなんて、俺たち縁がありますね」
食べながらまた優しく笑いかけてくる。
彼の笑顔は見惚れてしまうほど綺麗で、思わずドキッとしてしまっていた。
「もう食べれないー」
二人ともお腹いっぱいになっていた。
あの小籠包は美味しかったがやはり量が多かった。
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