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ぎぃやぁぁぁぁぁ
断末魔のような悲鳴とともに、後鳥羽上皇は気力を振り絞って、化物にしがみついた。
しかし激しく振りほどかれ、上皇は数間も宙を舞って、地上に叩きつけられた。
うぅ
息が詰まり、声が出ない。激しい痛みが、灼熱の炎となって、全身を焼き尽くそうとしているようだ。もはや半身を起こす事も出来ない。
鳥頭人身の化物が、ゆっくりと近づいてくるのを見て、さすがに後鳥羽上皇も観念した。もはやこれまでと覚悟した時、上皇は自分の手に何かを握っていることに気づいた。
引き寄せて見ると、それは化物が身に纏っていた袈裟だった。恐らく振りほどかれた拍子に剥ぎ取ってしまったのだろう。
かつて帝王として君臨した自分が、最期の時に手にした物をよく見ておこう、と上皇は袈裟を引き寄せた。そして化物が迫ってくるまでの間に、その袈裟に見覚えがあることに気づいた。
これは……。
記憶を頼りに袈裟を手繰ると、やはり思った場所に、覚えのある刺繍文字が見てとれた。
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