32人が本棚に入れています
本棚に追加
突然、先輩の右手首がぽきっと折れたのだ。
僕は驚いて先輩を見た。それから先輩を折れた手首を見る。折れた手首の断面は世間一般で言う水色で、割れた場所に光が当たって反射しきらきら輝いている。
多分さっき品出し中になんかぶつかったんだと思うんだよねーでも今まで段ボールで割れたことなかったしーそんな脆くなかったと思うんだけどなーなぜか手首だけ折れやすいんだよねー、どうでもよさそうに先輩は言った。もう先輩は自分の身体が割れることに慣れているのだ。雑に手首をくっつける先輩を横目で見る。きらきらと宝石の細かい欠片が落ちていく。
「欠片」
「え?」
「細かい欠片とかはどうするんですか、砕けちゃったやつとか」
僕の聞き方は、先輩にとって珍しいものだったのだろう。先輩は目を一瞬丸めた。
「いや、欠片はもういいの、めんどくさいから」
そして先輩はいつもの笑顔を浮かべる。それを見て僕は不安になった。
「まあ、ほっといちゃうから折れやすいんだけどさ」
「分かってんじゃないすか原因‼」
「ははは!!」
「いや笑う所じゃないんすよ」
笑う先輩を僕は睨む。先輩は小さく笑った。
「まぁそれはいいって。とりあえず掃除しようぜ、ついでに店内もモップかけちゃうか。一石二鳥ってやつよ………宝石だけにー!!」
先輩はそう言ってはははと笑う。僕はため息を1つ吐き、自分と先輩分のモップを2本取って、店内の清掃を始めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!