31人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
あたしは、そう言ったのだった。
☆☆☆
スズが教室へ戻って来たのは放課後になってからだった。
「ちょっとスズ、今までどこに言ってたの?」
心配するフリをして駆け寄ってみると、スズの目が赤く腫れていることに気が付いた。
どこかで泣いていたのだろう。
スズは返事をする前に教室内を見回した。
まだ、1人も返っていないことに違和感を覚えているに違いない。
「みんな、スズのことを心配して残ってくれてたんだよ?」
あたしはそう説明している間に、サチが教室のドアに鍵をかけた。
「別に、心配なんてしなくていいのに」
小さな声でそう言い、自分の席へと向かうスズ。
「そんな言い方ないんじゃないの?」
クラスメートが怒りを込めて声でそう言った。
スズは一旦そちらへ視線を向けるが、なにも言わずに鞄に教科書やノートを入れ始めた。
このまま逃がすワケにはいかない。
そう思っていた時、スズが動きを止めた。
「え?」
首を傾げてそう呟き、机の中を確認している。
きっと、メモ帳を探しているのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!