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この付近には信号機がないから、どうしてもここを渡らないといけないのだ。
あたしは階段を上がり始める前に、道路の向こう側を確認した。
さっきの男の姿は見えない。
でも、もしかしたらどこかに隠れているかもしれない。
そう思い、気を張った状態でゆっくりと階段を上がりはじめた。
歩道橋の上には相変わらず人の姿がない。
けれど、下を見れば帰宅途中の車が沢山通っている。
もし、今道路に落ちたらあたしはどうなるだろう?
そう考えて背筋がゾッと寒くなった。
振り向いても誰もいない事を確認しつつ、慎重に階段を下りて行く。
死んだヨシキみたいに、なにもしていない他人に危害を加える人間はいくらでもいる。
一見真面目に見えても、信用しちゃいけない。
緊張しながらもどうにか階段を下りて行き、ホッと息を吐きだした。
今回は変な男はいなかったみたいだ。
「でも、一応両親には話しといた方がいいよね。危ないし」
そう呟いた時だった。
不意に目の前の歩道を塞ぐように黒いワンボックスカーが止まった。
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